電気用品安全法という法律を知っているだろうか。
近年稀に見る悪法である。
電気用品安全法は2001年に施行された。
その内容というのは、簡単に言えば、
電源を使用する電気製品に対して安全基準を新たにつくり、
それに適合したものに「PSEマーク」をつけて販売するというものである。
この法律により、PSEマークが付いていない製品の製造・販売・輸入が禁止され、
これに違反すると法人の場合、最大1億円の罰金が科せられる。
もう一度言うが、この法律は2001年に既に施行されている。
しかし、この法律のことを知っていたという人はごく少数であるだろう。
それというのも、この法律は、電気用品の種類により、
施行より5/7/10年の猶予期間があり、その規制はまだ開始されていないのだ。
そしてその規制の第一段階がこの4月1日より開始されようとしている。
規制が開始されると何が起こるか。
リサイクルショップでは2000年以前に
製造された家電製品の取り扱いが出来なくなる。
大手家電リサイクルショップ・ハードオフでは
2月から買い取りを中止している店舗がある。
中古販売店では、この法律により廃業するところも出るだろうと懸念されている。
ただし個人間の売買は規制の対象外とされている。
さらにこの波紋は我々ミュージシャンにも広がり深刻な問題となっている。
この法律の適用範囲だが、直接交流電源を使用する回路を含むもの、
つまりコンセントから電源を取るもの意外は除外される。
よってギター・ベースなど楽器本体、AC電源を使用するエフェクタはセーフ。
しかしアンプは法律の適用範囲だ。
これにより、中古市場からPSEマークの取得の無いアンプが消える。
とりわけ問題となるのが、
マニアの間で高額で取引されるヴィンテージアンプを完全に買えなくなることだ。
また、キーボーディストにとってはヴィンテージシンセやエレピ等の市場も消滅。
楽器だけではない、オーディオマニアを唸らせるヴィンテージオーディオ機材など
も同じことである。
我々の世界では、歴史的名器とも呼べる楽器がしばしば存在する。
そんなヴィンテージ楽器は、現在の技術では再現が不可能な、
当時の職人の業をふんだんに生かされた
永遠に再び製造されることのない過去の遺産である。
その職人たちの偉大な功績は、この先も手厚く保護され保存されて行くべきなのだ。
一方で世界遺産という保護制度がありながら、
もう一方でヴィンテージ機材はなぜ保護されないのか。
電気用品安全法の表向きの目的は、電気機器の安全性の確保にあるわけだが、
その裏には、中古市場の縮小により新規(新品)市場の活性化の促進をはらむ。
消費税総額表示制度が、消費者の購入の利便性を計るという理由の裏側に、
増税の際に税額を不透明にさせる意図を含むのと同じように。
さらには、この法律により、
タイムスタンプ機能の付加の義務化も検討されているそうだ。
タイムスタンプ機能とは、早い話がソニータイマーのことだ。
ソニータイマーといえばおなじみ、
購入して一定期間使用すると勝手に壊れるというもの。
これは、最近話題となった某社製温風機事故の例を受け、
製品の安全性向上を表向きの目的としている。
本意は、当然、新規市場の拡大である。
また、冒頭で述べた、施行後の猶予期間のこと。
この猶予期間によって、誰もが施行から忘れた頃に規制が開始される点。
消費者には十分な認識がされないうちに規制開始となる。
全くの悪法である。
電安法に関しての詳しい情報は、こちらに分かりやすくまとまっている。
電気用品安全法@2chまとめ
ちなみに、自分の機材のPSEマークも確認してみた。
ギターアンプMarshall JCM900。1990年代初頭製。
当然PSEマークは無し。
去年購入したパワーサプライ(ACアダプタ)にはPSEマークが付加されていた。
このパワーサプライはたしかカナダのメーカのもので、
カナダの品質認証マークであるC-ULマーク、
また欧州の品質認証マークであるCEマークも付加されている。
PSEマークは日本の規格であるため、
メーカーではなく日本の輸入代理店がPSE許可を取得し、付加したものと考えられる。
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